犬が死んだ朝
犬と一緒に捨てられたのだと気づくまでにはずいぶん時間がかかった。
7年前、同棲していた彼女を空港まで送りに行った時は、帰ってくるものだと信じきっていた。あんなに溺愛していた犬を置いて出ていくなんて、考えられなかったからだ。
犬は彼女がペットショップで一目ぼれして、買ったらしい。
ペット禁止のマンションだったので、大家さんとご近所からクレームがついて、マンションを追い出され、仕方なく同棲することになった。
当時の自分は、同棲は結婚へ向けてのステップアップであると勘違いしていたので、大喜びで犬と彼女を受け入れた。
そして同棲後、半年もたたないうちに実家に帰ってしまったのだ。まさかそのまま7年もの間、放っておかれるとは思いもよらず、犬との生活が続いた。
犬に病気やケガをさせたら、彼女に悪いと飼育管理を徹底してきた。
仕事でやっているのと同じように、獣医師の指示に従い、何か異常があればすぐに専門家に相談した。動物病院の看護師からは「よい飼い主さんのお手本ですね」と誉められたことがある。
犬は出て行った彼女に接していたのと同じように、自分になついてくれた。
最初は「可哀想に」と同情から相手をしていたのが、次第に無くてはならない存在になってきた。
もともとペットに関心のない自分が、この犬に対して強い絆を感じるようになったのは不思議なことだと思う。一緒に暮らすパートナーとして、無
コメント