猫が死んだ朝
母が動物嫌いだったので、私はペットと暮らした経験がない。
可愛いな、とは思うけど、身近に動物がいなかったから、好きか嫌いかという選択肢すらなかった。遠い国の見知らぬ何か、という感覚でいた。
大学を卒業して付き合った彼は「生まれた時から猫を切らしたことがない」と言うほど、猫好きの家庭に育った。
一緒に散歩をしていると必ず野良猫を見つけるので、「世の中にはこんなにたくさんの猫がいるのね」と驚いたら、大笑いされた。
そして、「関心がないというのは、ある意味、一番の動物愛護だよな」と言う。彼の母親は棄て猫の保護活動をしているらしい。
特に猫好きをこじらせて、たくさんの猫を繁殖させて飼育崩壊してしまった人に、困っているそうだ。「関心がなければ手を出さないから、あなたのスタンスは良いよ」と言われたことがある。
そんな彼と、もう一か月も会っていない。
お互い忙しいから何とかやりくりして、通勤前に駅前で待ち合せたり、彼が仕事場にしているマンションへちょっとだけ寄るなど、細かく時間をつくってきた。
それなのに、今回は「猫が病気で死にそうなんだ」という連絡があり、「猫が亡くなった」と夜中に知らせてきたのを最後に、連絡が途絶えてしまった。
彼自身が拾ってきて、可愛がって育てた子だと聞いていたので、ショックは大きかったのだろう。
しばらくそっとしてあげようと決心して、あまりうるさく連絡をし
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