黒猫の黄金の目のなみだ【幸せをつかんだ猫】
もう助からないかもしれないと獣医師が言った時、私はレモンイエローが鮮やかな、黄色いスカートをはいていました。全くその場にそぐわない鮮やかな色で、3歳の娘が大好きだからという理由で身に着けたのでした。医者は言いにくそうに「厳しい状態です」と告げて、さっさと奥に行ってしまい、診察台の上に取り残された黒い子猫がいっそう孤独に見えました。
黒い子猫が良いと言ったのは娘で、夫も「この子は黄金の目で、可愛い」と乗り気になって、引き取りました。軽はずみな決断だったとは思いたくないのですが、黒い子猫を見たとたん、夫と娘が盛り上がって、絶対にこの子にする、と、即決したのです。あの時、私がもっと慎重に選んでいれば、健康な体の猫を引き取ることができたのかもしれません。
そんなことをぼんやり考えながら家に帰り、目をつぶってぐったり辛そうな子猫を暖かなタオルの上に寝かせた時、涙がこぼれました。こんなに小さくはかなげな子猫が、なぜこんなに苦しい目に遭い、命を奪われねばならないのか。あまりにも理不尽で苦しすぎます。涙は黄色いスカートの上にこぼれて、点々とシミになって広がってゆきます。
気が付くと黒猫が大きな目で私を見つめていました。横を向いて、黄金色の目を見開いています。「目を覚ましたよ!早く来て、目を開いたよ!」私は大声で娘を呼びよせました。娘は不思議そうに猫の顔
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