ペットには飼い主しかいない。『犬と私の10の約束』
筆者は犬派か猫派かと聞かれたら、猫派だと即答するほどの猫バカであることを自覚している。しかし、そんな猫まみれな頭の中にずっと印象深く残っている犬本が一冊だけある。それが『犬と私の10の約束』(川口晴/文藝春秋)だ。この書籍には、動物と暮らすために必要なものが凝縮されているような気がしてならない。
本作は女優・田中麗奈さん主演で映画化もされた人気作。「犬の十戒」が物語のモチーフになっていることでも話題を呼んだ。おそらく、映画館まで足を運んだりテレビで見たりした方も多いのではないだろうか。
主人公は母親を亡くした12歳の女の子・あかり。親の死を経験し、孤独に打ちひしがれていた少女の心を救ったのは、迷いこんできた1匹の子犬・ソックス。ソックスは犬嫌いの父親の布団にもぐったり、クラスメイトと遊んだりし、あかりの日常を明るく照らしていく。
しかし、年を重ねるにつれ、あかりの心は徐々にソックスから離れていってしまう。あかりは変化していく人間関係や仕事、恋愛などソックス以外に気持ちを注力するようになっていく。こうしたあかりの姿は一見、ひどく映るかもしれない。しかし、動物と暮らした経験がある人ならば、少し気持ちが分かる部分もあるのではないだろうか。
例えば、残業続きでくたくたになって家に帰った時。お風呂に入ったり食事をしたりする気力さえないの
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