猫が家に来て、妹の人生は変わった

虹の橋を渡る日まで
食事中はドアを閉めて猫を入れないことになっているが、少しだけあいた隙間からするりと猫が侵入して、足にじゃれついてきた。遊びたいのだろう。すぐに気づいた妹がデロデロの顔をして、
「にゃっちゃ～ん、遊びたいの～？じゃ、二階に行こう」と甘ったれた声をした後、怖い声で隣の私に、
「おねえ、ハンバーグ盗るな」と言い捨てて、そそくさと席を立った。
妹と猫がドアを閉めたのを確かめた後、父がこっそり妹の新しい恋人について教えてくれる。
「そいつの名前で検索したら、英語の論文がいっぱい出てきて、若手AIのナントカって、インタビューされてる、とんでもないヤツだぞ。AIとか人工知能とかいうのには、変なのが多いそうだけど、大丈夫か？」と私に聞く。
「大丈夫だよ、新しい彼氏は飲んでる最中にバッグからお金を盗まないから安心だ、って」
「やだ、あの子ったら、そんなひどい男と付き合ってたのね！やっぱり就職しなかったのがよくなかった」と母が愚痴る。そうじゃない、という言葉をごはんといっしょに飲み込んだ。
妹は学生時代に始めたアクセサリーをネットで販売している。とても好評で、そちらの方に専念するために就活をしなかった。就職しなかった、ではなく、客が付いて充分やっていけると判断して、その道に進んだ、というのが正解だけれど、母の理解を超えているから、黙って食べ終えて、二階にあがり、妹のヘルプに入った

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