虹の橋を渡る日まで
久しぶりの休日だというのに、田舎の両親から実家に呼ばれた。妹も来ていたのだが、俺たちが揃ったところで親父がおもむろに「大事な話がある」と言う。ちょっと身構えていたら、親父の口から出たのは「カフェを開こうと思う」だった。
俺も妹も「???」と声も出ない。いきなり何をぬかすのかと思ったが、「母さんとずっと話はしていたんだが、資金のメドもついたし、この家を古民家風カフェにリニューアルしようかと思う」と切り出した。
「ちょっと待てよ、古民家風って、うちはただの古い家だし、開業資金ってのはどうしたんだ?そんなに退職金が出たのかよ?」
「いや、信金の山田さんが二つ返事で審査通してくれた」
さすが田舎だな、って、信金の山田さんもちょっとは考えろよ。というか、もう図面も出来てんのかよっ!テーブルには設計図が広げられた。
親父は地方公務員を真面目に勤め上げて、昨年定年退職した。無趣味な男だと思っていたが、定年後すぐ知人の喫茶店で「修行」したらしい。だから「コーヒーもテー(ティーと言えない)も大丈夫だ」だと。
いつ頃からオフクロとそんな話をしていたのかと聞くと、俺たちが独立してこの家から出て行ったあたりかららしい。でもこんな田舎に客が来るのかぁ?
「私のリサーチによると、近辺のカフェに対する興味は高く、特にロマンスグレーのマスターというのに、かなりの需要が見込まれることが判明した
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