八房の元ネタ?盤瓠という名の犬
江戸時代後期に誕生した古典長編小説『南総里見八犬伝』。この作品には、八房(やつふさ)という名の勇猛な犬が登場するが、この犬は里見家当主が戯れに「敵将の首をとってくれば、愛娘の伏姫を嫁にくれてやる」との言葉を真に受ける。そうして実際に敵将を討って首を持ち帰ってきてしまい、ついには渋々ではあるものの、伏姫をあたえられることとなった。
そののち、八房は伏姫とともに富山に向かい、犬ながら読経の日々を送るという珍妙な生活を送るものの、里見家当主の差し金で射殺されてしまう。このエピソードは有名であるが、実は八房を語る際にはモデルと思われる別の犬の存在を外すことはできない。
それが盤瓠(ばんこ)だ。
盤瓠、限りなく人間に近い知能を持った美しい毛並みの犬
盤瓠は中国につたわる伝説上の存在で、『後漢書』の中にその名を見ることができる。もともとは宮廷に暮らす老婆の耳の出来物から生まれた虫であったというが、これがどんどん成長していき、最終的にはなぜか5つの毛色をたたえる美しい犬となった、とある。
虫が犬に変身するという出自からして奇妙だが、さらに5色の毛をまとっていたという話も魅力的。もちろんこれは創作の話であるので、実際に盤瓠が存在していたというわけではないが。
盤瓠が『後漢書』に登場するのは中国神話上の皇帝である高辛が敵国の攻撃に晒されていた状況下。高辛は窮地に陥り、
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