猫が死んだ朝
「何してんの、お兄ちゃん!」という妹の声で我に返った。猫が死んで三日目の朝だと思いながら、朝食を食べていた時だった。妹が指さした先は味噌汁で、その中に納豆を入れていた。自分ではご飯にかけているつもりだった。
「昨夜は遅くまで起きていたみたいね、コーヒーは濃いめにする?」と母が席を立とうとするので、「いい、今日は急ぐから、コーヒーは途中で買う」と制止して、納豆入りの味噌汁をご飯にかけて、勢いよくかき込んだ。妹に「わざとやったんだ」というゼスチャーを兼ねて、見せつけるように一気に飲み下す。
猫が死んでからずっと、自分の中で何かがごっそり抜け落ちた感じがして、自分が自分じゃないようなギクシャクした感覚でいる。いつも通りの日常なのに、とても大切なものがいなくなった、果てしない喪失感で体がしびれる感じがする。
心が大きな鎧に覆われてしまったようで、何をしていても、心に響かず遠くに感じられる。ふと気が付けば猫のことばかり考えている。天寿を全うして虹の橋を渡る日まで、幸せに過ごして欲しいと思ったのに、腎臓病というよくある病気で死なせてしまった。後悔と自己嫌悪で、苦しくて苦しくて仕方がない。
昨夜はそんな苦しい状態が嫌で、ネットで調べまくった。どうやらこれは典型的なペットロスの症状らしい。ペットロスなんて嫌な言葉でくくられてしまうのがとても不愉快で、なかなか眠れなかった。ロスなん
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