友だち【ブックナビ】
当たり前の日常がたったひとつのウイルスで崩壊する。不安定で不確かな私たちの社会や生活を振り返ると、犬の確かな存在感や、犬と人の愛情と強い絆のありがたさは、何にも代えがたいもののように感じられる。
本は読むべき時を選ぶが、まさにこの本は犬を飼っている人が今、読むべき一冊だと思う。不確かな人間と、確かな命を生きる犬との対比を楽しむのに、これほど適した時は無いだろう。
グレートデンと人間の対比が面白い
この本は主人公の「わたし」が自殺した男性の「あなた」へ、現在や過去の出来事について、自分の気持ちを吐露するかたちで進んでいく。「あなた」は高齢の大型犬・グレートデンのアポロを飼育していた。「わたし」は「あなた」の三人目の妻から犬を引き取って欲しいと頼まれる。
「わたし」はペット不可のアパートに住んでいたため、許可を得るために交渉する。もともと猫派の「わたし」が大型犬と散歩をしていると、これまで出会わなかったような、さまざまな人に出会うことになる。こうした大型犬との生活で体験する出来事は、犬の飼い主ならば思わず納得して応援したくなるエピソードばかりだ。
“いつだってわたしは他人の注目を浴びたくないと思っているが、用をたすときプライバシーがないのが—アポロは少しも気にしていないが—わたしにはなかなか辛いのだ。最悪なのは、後片づけをしているときに
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