猫が死んだ夜
玄関のインターフォンが鳴って誰か来たと思ったら、二番目の兄だった。弟と姉とでびっくりして顔を見合わせている。これで5人きょうだいの全員が実家に帰ってきたことになる。正月も帰らない二番目の兄が、猫が死にそうになったと聞いて、飛行機の距離を帰ってきたのだ。
母親は「お父さんが交通事故の時は、帰らなかったのに」とつぶやきつつ迎え入れた。猫の臨終で、普段はバラバラだった家族が勢ぞろいした。
横たわっている猫はもう虫の息で遠くをうっすら見ている。お腹にかけたタオルはぺったんこで、やせ細った足が無造作に投げ出されていた。
二番目の兄は家についてすぐ猫を見て「ありがとな」と言った。その言葉が胸に響いて、私は思わず号泣してしまった。振り返ると両親も、弟と姉も、泣いている。
私はそっと猫の前脚の、ちょうど肉球のところをそっと指でさわった。握手してさようならを伝えたかったのだ。猫は手の先をちょっとまげてくれて、本当に握手しているようだった。
「見て!握手してくれたよ」と言ったら、姉が「私も」と指を肉球に触った。私の時と同じように、手の先をくるんとまるめて、握手してくれた。二人の兄と弟、両親全員がそうやって握手して、最後を見送った。
全員と握手をした後、ぺたんこだったお腹のあたりがふっと大きくなり、長く息を吐き、吐き終わったところで、命が尽きた。母親が我慢できないように部屋から出て行き
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