虹の橋を渡る日まで
マンションのエントランスに飾られたグリーンの下に小さな石が3つ置いてあった。子どもが遊んでいたのだろう。ほほえましいなと思うと同時に、胸が締め付けられるような気分になってしまった。つい最近、小さな石ころが原因で、大好きだった恋人と別れてしまったのだ。
高校時代の同級生で、ずっと憧れていた。長身のピッチャーで、少年野球チーム時代から有名な選手だった。プロになるという噂もあったようだが、私と同じ普通高校に進学して、野球部のキャプテンをしていた。
とびきり甘いフェイスとスタイルの良さで、高校中の女子の、憧れの的(まと)、ヒーロー的存在だった。高校二年の美術は選択授業で、たまたま私は彼と同じ絵画コースを選択していた。大好きな猫の絵を描いて先生に褒められた時は、彼の目を意識して、ちょっと誇らしかったっけ。
先生にデッサンを提出するため、並んで立っていたら、私の真後ろに彼が並んだ。私のカバンにぶら下がっていた猫のマスコットを見つけて「猫、好きなの?」といきなり聞いてきたのだ。びっくりして「うん」と答えて、勇気を出して「佐々木君は猫好き?」と聞いてみたら、「わかんねえ」とぶっきらぼうに返された。それだけの出来事なのに、会話ができた喜びで興奮した。
大学は違ったが同じ六大学だったので、大学野球で活躍している姿をずっと遠くから見ていた。それが、卒業後、同じ会社に就職したのをき
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