虹の橋を渡る日まで
母親がガンだと診断されてから、あっという間に手術の日が決まった。母自身は「うちはガン家系だから、なると思ってた。あんたもちゃんと検査しときなさいよ」と、自分の身体についてはあまり深刻に捉えていない様で、見かけは元気にしている。
母の一番の心配事は猫だった。入院する直前まで「ちゃんとお世話してよ、トイレは毎回ちゃんと見るのよ、ちょっとでもトイレに変わったことがあったらすぐに病院に行ってよ」と猫のことばかりうるさく言っていた。
猫は母がスーパーの駐車場で拾ってきた子で、育ててくれた母にだけなついていて、私にはちょっと冷たい。同居人として認めてくれている様だが、べったり甘えてくることはない。よそよそしい感じもするけど、猫なんてそんなもんだ。
母は溺愛している猫がどんな具合か、四六時中、LINEとメッセで連絡してくる。でも、猫はあんなに可愛がってくれた母がいないのに、何事も無かったかのように、毎日、平然と過ごしているのだ。
母が可哀想なので、「おかあさんがいないって、猫が探してるよ。はやく元気になって帰ってきてね」なんて返信しているけれど、実際のところ、猫はいつもと全く変わらない。そして実は私はこの変わらない様子に救われているのだ。
母は「ステージⅠなんて、おできみたいなもんよ」と言っていたけど、私にとってガンは父の命を奪った恐ろしい病でもある。両親ともガンで亡くし
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