虹の橋を渡る日まで
田舎暮らしの祖父が施設に入った、と母から連絡があった。ずっと可愛がってもらっていた祖父だから、施設に会いに行くついでに母方の実家に寄ってみた。いまだに矍鑠(かくしゃく)としている祖母に、祖父が施設に入るまでの経過を聞いた。原因は犬にあった。
実家にはゴンという犬がいるのだが、なんと祖父はゴンを裏山に棄てに行き、迷子になってしまったのだ。
その日、祖父の姿が見えないと心配していた祖母が、庭に出てみると犬小屋にいるはずのゴンがいない。夕方になっても、祖父とゴンが帰って来ない。心配になって交番に行こうとしたところ、ゴンだけがひとりで帰って来た。
「ゴン、おじいちゃんは一緒じゃなかったの?」と聞いたところで、ゴンが答えてくれる訳もなく、夜になっても帰らない祖父を探して、町内のみんなで近隣を見回ったそうだ。
夜更けになって、祖父は裏山にある祠の階段で見つかった。発見直後も要領を得ない受け答えをしていたが、祖母が粘り強く聞き出すと、「犬を棄てに山に入った」と言う。
ゴンを可愛がっていた祖母の怒りは凄まじかった。さらに、棄てに行ったはずのゴンの方が、先にさっさと帰って来た件が、ご近所で笑い話になってしまい、正気に戻った祖父は激しく落ち込んだそうだ。
それなのに、祖父はその後、二度もゴンを棄てに行った。その都度、みんなで探し回ることになり、相当な迷惑をかけたという。ちなみに
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