虹の橋を渡る日まで
父が倒れて久しぶりに実家に帰ったら、通りを隔てた家の前がコンビニになっていて驚いた。店にはでっぷり太ったお嫁さんがレジにいた。細くてきゃしゃなお嫁さんが花嫁姿で家に来た日を思い出し、ここにも長い長い時が経ったのを感じた。
今はビルになってしまったわが家は、二階建てのクリーニング店を営んでいた。両親は仕事に忙しく、私は家に帰ると宿題をしながら二階から外を眺めるのが好きだった。当時お向かいは酒屋さんで、店先でのんびり昼寝をしている姿をいつも見ていた。
故郷の空気を吸って、もう忘れていた子供の頃の風景が、鮮明によみがえって来た。
コンビニになる前の酒屋さんは古い木造の店舗で、おばあちゃんと息子さん夫婦がお店を切り盛りしていた。おばあさんは私に優しく、いつもお菓子をくれて、猫のシロと遊ばせてくれた。
シロは大きな雄猫で、誰にでも愛想がよく、近所でも有名な猫だった。父は「城山酒店じゃなくて白猫酒店だ」とよく言っていて、子ども心に父の冗談はいつもくだらないけど、その通りだなとも思っていた。
冬、寒くなると店のストーブの隣に座布団が敷かれて、猫は丸くなって寝ていた。春になると店先に縁台が出されて、その上でやっぱり猫が丸くなって寝ていた。
子猫が来た日のことは、忘れられない。二階から見下ろしていたら、酒屋の店先に小さく白い球のようなものがちょろちょろしている。走って店に行っ
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