虹の橋を渡る日まで
その老人は杖をついてゆっくり向こうから歩いてきた。私とワンコが散歩をしながらすれ違おうとした時、老人は杖をサッと振って「犬は嫌いだっ!」と叫んだ。
私も犬も思いがけない行動にびっくりして飛び上がった。杖を振り回して犬にケガをさせられたらたまらない。とっさに走って近くの公園に逃げた。いつものように、顔見知りの飼い主さんの姿を見かけたので、思わず走り寄って、「よかった、いてくれて。あそこで老人に『犬は嫌いだ』って言われたの、どうしよう」と訴えた。
顔見知りの飼い主さんもびっくりして、「大丈夫?ケガしなかった?ここ、座って」と心配してくれて、「あの老人、有名なヒトなのよ」と教えてくれた。「私もこの子とすれ違った時に『犬は嫌いだっ!』ってやられたわ、びっくりするわよね」と同情してくれた。このあたりでは知られたおかしな行動をする人らしい。
「奥さんと二人暮らしだった時から、ああやってずっと散歩してたんだけど、奥さんが亡くなってから、ボケちゃったみたい。犬の飼い主にだけ、嫌いだっ!て杖を振るうけれど、ケガをさせるようなことはしないから大丈夫だよ」となぐさめてくれた。
いきなり見知らぬ人に攻撃されたのは初めてだったし、何よりワンコとの楽しい散歩に泥をかけられたような出来事に衝撃を受けた。確かに世の中には犬が嫌いな人は多いけれど、面と向かって嫌いだと言われるなんて、ショックで
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