虹の橋を渡る日まで
愛猫のミーが虹の橋を渡って半年が過ぎた頃、隣の市に住む娘から、突然の電話がきた。いつもはスマホのメッセージばかりなので、何か特別な用事なのだろう。
「ねぇ、お母さ~ん」
この言い方は昔から娘が何か欲しいもの、やってもらいたいことがあるとき、つまりおねだりするときの言い方だった。また何か、私にして欲しいことがあるのだろう。
娘は20年前、10歳の時にも子猫のミーを抱えて、「ねぇ、お母さ~ん」とやったっけ。今はもう30歳の子持ちなのに、まだ、こういう甘えた言い方をする。
「ん~、今日は何の用なの?」
娘に合わせて、少しとぼけて返すと、少し言いにくそうに
「え~、とね、その、また猫飼う気ない?」
半年が経ったとはいえ、いまだにミーがいなくなった哀しさは癒えていない。20年も一緒に暮らした家族だった。いなくなった当初は、夫婦ふたりして泣き暮らした。
そんな私たちを心配して、娘が孫を連れて家事を手伝ってくれたことは感謝している。虹の橋を渡った直後に比べて、落ち着いてきたとはいえ、まだ次の猫を飼う気にはならない。
「あのね、うちの子と同じ幼稚園のママ友がいるんだけど、子猫が産まれちゃって、里親を探していて、誰かいないかって相談されたの」
いわゆるママ友との関係で、無下にも断れない、ということらしい。娘のことだから、半年前にミーが亡くなったことを、ママ友にしゃべったのだろう
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