虹の橋を渡る日まで
唐突だが、あと1時間ほどで地球は滅亡するらしい。正確にはあと50と6分だけど、問題は、そんなときに仔犬を拾ってしまったことだ。
私はこの3日、ろくに寝ていない。それというのも、締め切りが迫っているというのに、大幅な変更を要求してきたアホ、いやクライアント様のおかげだ。
代理店から送られてきた大量の変更素材を相手に手を焼き続けていて、「あー、もう、締め切りなんて無くなればいいのにっ」と叫んだところで地球滅亡のニュースを聞いてしまった。
「やったー、締め切り無くなった」と仕事を投げ出して、それじゃ最後に外の空気を吸いに行くか、などと久しぶりにデスクを離れ、近所の公園まで出て行った。
誰もいない公園で深呼吸をしていると、仔犬が駆け寄ってきた。周りには飼い主らしい人はいない。それにこいつは首輪も無い。野良犬か?いや、迷子の子だろう。きれいな毛づやだもの。どうしたものかな、と思ったけれど、仔犬を抱えて部屋に戻っていた。
たまたま試供品のペットフードがあったので、ふやかして仔犬に与えた。お腹が減っていたらしく、一心不乱にがっついている。最後の晩餐だ。私も何か食べておくかな、そう思って冷蔵庫を開けたらタマゴがひとつ。そりゃそうだ、ここしばらく買い物にも行けなかったもの。地球最後の日にはやっぱりお母さんの皿うどん食べたかったな。作り方をちゃんと教わっておくべきだった。
台所
コメント