犬が死んだ朝
朝、目覚める時が一番つらい。犬の散歩に行かなくてもよいという、悲しい現実を突きつけられるからだ。犬が亡くなってから、朝が一日でもっとも苦しい時間になってしまった。
たった一週間前、犬がいた時は、目覚めとともにエネルギー全開で飛び起きていた。うちの子は私が起きるタイミングを見事に察知して、寝室のドアの前までやってくる。廊下を歩くカチャカチャという爪の音を、目覚まし代わりにしていた。朝の始まりの、可愛い足音だった。
目が覚めて、愛犬を思い出し、苦しくてならない。胸が締め付けられ、身体がこわばって息ができない。かみしめた口の中が乾いて、鉄の味がする。寝ている間に死ねばよかったのに、とすら思う。
今朝もそんな気分で、ベッドの中で体をこわばらせていた。すると何か物音がした。犬がいつも寝ていたリビングから私の寝室のドアの前まで、カチャカチャと廊下を歩く音がしたのである。
まさかうちの子?とドキドキしながら寝室のドアを見た。カチャカチャ音はドアの前で止まり、静かになった。確かにうちの子が歩いてきた気配がした。
うちの子が歩いている!亡くなって一週間。まだうちにいてくれたんだ。ベッドから飛び出してドアを開けて、いつも待っていた場所を見下ろすけど、いない。歩いた跡を確かめたくて、廊下からリビングまでの床を、這いつくばって雑巾がけをするように、手のひらで感じてみたけれど、一本の毛も落ち
コメント