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彼にとっては単なる「犬」なんだな【犬が死んだ朝】

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犬が死んだ朝
「いつまでも泣いてるんじゃないよ」と言われて、思わず彼の顔を見てしまった。こんな人だったっけ?優しくて、思いやりがあって、素敵な男性だと思っていたのに。
「せっかく元気づけてあげようと思ってこの店を取ったんだよ?なのに、なんで涙ぐんだりしてるの?」いきなり怒っちゃってる。私はびっくりして食べ物が喉を通らない。だって、うちの子が虹の橋を渡って、まだ一週間しか経ってない。何をしてても思い出すんだよ。
レストランで分厚いハムが前菜に出てきて、うちの子がハム好きだったのを思い出した。それでつい「このハム、すごく美味しそう」って言った途端、涙があふれ出てしまったのだ。
「ごめんね、ここ、すごく美味しいって聞いてて、来たかったから嬉しい。ありがとう。あんまりハムが美味しいから、つい涙が出ちゃった、嬉し涙」へへっと肩をすくめて見せた。彼はちょっと機嫌を直して「だろ?だから、犬のことで、もう泣くのやめろよ、いつまでも引きずっててもしょうがないだろ」と追い打ちをかけてきた。もうダメだ。
「そうよね、ごめんね。でもどうやってここ、予約取ったの?よく取れたね?すごいじゃない?」彼が喜ぶ言葉をあげた。僕スゴイの自慢話は尽きることなく、私は適当な相槌と「ホントすごいね~」「で、どうしたの?」「それで?」でやり過ごした。食事中に私の心はどんどん冷えて行って、最後のデザートで氷点下まで下がった

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